北米での「グッチ」の成長に陰り

ケリング(KERING)の2019年1~3月期決算は、売上高が前年同期比21.8%増の37億8530万ユーロ(約4769億円)で、為替や買収の影響を除いた継続事業ベースでは同17.5%増だった。

ブランド別に売上高を見ると、売り上げ全体の61%を占める「グッチ(GUCCI)」が同24.5%増の23億2560万ユーロ(約2930億円)、13.1%を占める「サンローラン(SAINT LAURENT)」が同21.8%増の4億9750万ユーロ(約626億円)だった。その他部門では、好調だった「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が貢献して同24.9%の成長率となった。

数年にわたって快進撃を続けてきた「グッチ」だが、18年の第1四半期の成長率が同48.7%で、第4四半期が同28.1%だったことを考えると、勢いに陰りが見えてきたと言えるだろう。同ブランドの地域別での売上高はアジア太平洋地域が継続事業ベースで同35.5%増、日本が同15.8%増と引き続き好調である一方で、北米は同5.0%増と成長率が大幅に落ち込んでいる。

ジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)=ケリング最高財務責任者(CFO)は、「これは成長の“正常化”であり、そのペースも含めて想定内だ。『グッチ』の北米での成長率についても、複数の要素が組み合わされた結果であり、現時点で警戒するべき問題とは考えていない。北米市場に合わせてマーチャンダイジングなどを調整しており、今年も堅調に推移すると確信している」と述べた。同ブランドが販売していたバラクラバ帽風のトップスが黒人差別だと物議を醸したことが北米での売り上げに響いたのではないかという見方には、「『グッチ』および当グループは、可能な限り最良の方法で事態に対処した。再発防止策として、多様性を推進するさまざまなプロジェクトも行っている。この件が北米の業績に関係したと考えるべきではないし、最終的にあまり大きな影響はなかった」とこれを否定した。

中国政府による輸入税率引き下げの影響で、中国の消費者が旅行先ではなく国内でより多く買い物をするようになったこともあり、「グッチ」は中国で引き続き力強く成長している。デュプレCFOは、「中国における『グッチ』の人気は非常に高い」とコメントし、今年度の同ブランドの売り上げのおよそ35%を中国が占めるだろうとの見解を示した。

ケリングは、18年1月に傘下ブランドだった「プーマ(PUMA)」株の一部を株主に現物分配して保有比率を16%にまで引き下げているほか、19年4月には同じくアクションスポーツブランド「ボルコム(VOLCOM)」を売却し、ラグジュアリーに注力する方向性を示している。デュプレCFOは、「ラグジュアリーブランドの買収を慎重に検討している。よい機会があれば、適切なタイミングで実行したい」とコメントした。なお、フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)は18年12月期決算を発表した際に、「成長のためというより、当社のポートフォリオを補完するブランドを買収したいと考えている。しかし最近よく目にするような、必要以上に高い買い物をするつもりはない。当社の主要部門はファッションとレザーグッズなので、そうしたブランドを探している」と語った。

ピノーCEOはまた、「18年の第1四半期が非常に高い成長率だったことを踏まえても、『グッチ』や『サンローラン』などは今期も素晴らしい成長を見せた。当社は機敏に動くことができるため、今後も安定した利益性をもって成長し続けられるだろう」と全体的な見通しについてコメントした。

同社のライバルであるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)は4月11日に第1四半期決算を発表。「ルイ・ヴィトン」や「ディオール(DIOR)」が引き続き好調だったことを受けて、前年同期比15.5%増の125億3800万ユーロ(約1兆5797億円)の売上高を計上している。

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